はてなすび

スマブラが大好きな社会人のブログです。仕事の話とかもちょろっと。スマブラforWiiU,DX,Specialの記事を書きます。

【書評】羊と鋼の森 宮下奈都

f:id:nasubisb:20181023112102j:image

 

クロさん(@_kuro258)にWishlistからプレゼントして頂いたので、書評にしてみました。

 

 

目次

 

あらすじ どんな本なのか

 

 舞台は北海道で、新米調律師の外村が調律を通して、職場の先輩、顧客、ピアノと関わりながら成長する様が描かれています。外村の主観で語られる一人称の小説で、彼が真摯に調律に取り組んでいるのがよく伝わってきて、感情移入がしやすいです。

森とは、現代語で言うところの「沼」のような使われ方も本書ではしていて、どうやって調律という深い深い「森」に入っていき、そこでどう生きていくのかについてが、全編に渡ってのテーマになっています。

wikipediaの引用はこちら。

 

羊と鋼の森 - Wikipedia 

より引用。調律師のお話です。

外村は、高校2年の2学期のある日の放課後、体育館に置かれているグランドピアノ調律師調律するのを偶然目の当たりにする。そのことがきっかけとなり、外村は生まれてはじめて北海道を出て、本州にある調律師養成のための専門学校で2年間、調律の技術を学んだ。そして、北海道に戻り、江藤楽器という楽器店に就職する。入社して5か月が過ぎた秋のある日、ふたごの姉妹の住む家で柳が行う調律に同行する。入社2年目のある日、板鳥が行う一流ピアニストのコンサートの調律に同行する。” 直木賞候補、2016年本屋大賞受賞。

主たる登場人物としては、

柳 気さくな7つ上の先輩、具体的で感覚的な例え話が好き

秋野 感じの悪い職場のおっさん、元ピアニスト志望

板鳥 主人公が調律の世界に入ろうと思ったきっかけの凄腕調律師

和音と由仁 双子の女子高生ピアニスト

です。どの登場人物も多面的に描かれており、読み進めていくごとに理解が深まっていくのが実感できます。

 

 

作者 宮下奈都

宮下奈都 - Wikipediaより引用。

”宮下 奈都(みやした なつ、1967年[1] - )は日本小説家福井県福井市生まれ[2][3]福井県立高志高等学校卒業[4]上智大学文学部哲学科卒業[5]2004年、3人目の子供を妊娠中に執筆した「静かな雨」が第98回文學界新人賞佳作に入選し、小説家デビュー[6][7]2010年、「よろこびの歌」が第26回坪田譲治文学賞の候補となる[8]2012年、『誰かが足りない』が第9回本屋大賞で第7位を受賞する[9]2013年より1年間、北海道新得町に家族5人で山村留学を経験[10]2016年、『羊と鋼の森』で第154回直木三十五賞候補、第13回本屋大賞受賞。幼い頃に読んだ本で、特に好きだったものは、佐藤さとるだれも知らない小さな国』だという[11]。”

 この作者の小説を読んだのは、初めてなんですが、柔らかい文体で読後は凄く優しくて、明るい気持ちになれました。"誰かが足りない"もポチりました。

 

情景・心理描写の切り替えが的確

良い小説は大体そうなんですが、文章を読むだけで、読み手の脳裏に舞台がありありと浮かび上がってきます。どんなコンサート会場かとか、ピアノが置いてあるのはどんな家なのかとか。羊と鋼の森ではそれに加え、主人公の主観、心情描写との切り替えが非常にスムーズに行われています。

例:「なだらかな山が見えてくる。生まれ育った家から見えていた景色だ。」

「柳さんが音叉を鳴らす。ぴーんと音が鳴って、目の前のピアノのラ音がそれに共鳴する。つながっている、と思う。」

すっと物語に入り込める感じがしてとても好きです。擬音語の使い方も巧みですね。

 

 

エピソード

所々に織り交ぜられるエピソードがすごく良い味を出しています。ゼロから考えた話なのかそうでないかは分からないけど、物語に彩りを与えています。自分の体験だけではなくて、見聞きした話だとかということでしょうけれど、適切に配置して活用出来ているのは素晴らしいの一言です。

 例「その証拠に、ピアノに出会って以来、僕は記憶の中からいくつもの美しいものを発見した。

たとえば、実家にいる頃ときどき祖母が作ってくれたミルク紅茶。小鍋で煮出した紅茶にミルクを足すと、大雨の後濁った川みたいな色になる。鍋の底に魚を隠していそうな、あたたかいミルク紅茶。カップに注がれて渦を巻く液体にしばらく見惚れた。あれは美しかったと思う。」

 

偏屈な秋野さん

職場の先輩で嫌味な秋野さんという人が登場します。ああ、この小説にもこんな人が出てくるんだという気持ちになってしまったけれど、読み進めるにつれて、彼の音楽に対しての向き合い方が伝わってきて、最初の印象と比べたら良くなりました。まあそれでも、「人をじりじり踏みにじる」ようなことは言いたくないですけどね。

  でも秋野さんの言うことは的を射ていて、外村もその発言からヒントを得ています。気に入らない人の言うことだからと初めから何も耳に入れないのではなく、発言だけを客観的に捉えて自分の中で消化して、糧にしていく方が身にはなります。言葉そのままのアイデアではあまり役に立たなくとも、きっかけにして少し角度を変えて考えたら、成果が得られるということはままありますし。

 

努力と才能

 主人公は調律の才能と努力について、という問題に常に向き合っています。どうしたら上達するのか、自分は覚えが悪いのだろうか、など。

「才能っていうのはさ、ものすごく好きだっていう気持ちなんじゃないか。どんなことがあっても、そこから離れられない執念とか、闘志とか、そういうものと似てる何か。」先輩、柳さんのセリフです。

継続は力なりですね。羽生棋士の考え方とよく似ています。

何かに挑戦したら確実に報われるのであれば、誰でも必ず挑戦するだろう。報われないかもしれないところで、
同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続しているのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている。

羽生善治の名言から努力とは?思わず目が見開く8つの言葉 | FlyHigh!

より引用。

 

スマブラでもどんなに才能があっても、スマブラをプレイし続けない人はいます。そうなると、やり続けているプレイヤーには到底かないません。そう考えると、この考えには合理性があるのかなと思います。

音楽をやりたい

話し方教室に行って、ボーカルをやった時も思ったんですけど、音楽ってやっぱ凄いんですよ。古来から人類が続けてきた営みだけあって、生活が豊かになります。高校生の時ゲーム音楽をピアノで弾いて遊んでたので、もうちょい時間とお金の余裕が出来たらアコースティックピアノ買って、また弾きます。この小説を読んでその気持ちが一層強くなりました。

 

紙の本と電子書籍

 

satoru-takeuchi.hatenablog.com

最近読んだエントリです。紙の本の方がなんか良いんですよね。小説は特に世界に入り込みやすいです。ページをめくる時のワクワク感とスマホだと頻繁に来る通知が何も来ないのが大きいです。一方で、僕もマンガは電子書籍でも良いとは思います。部屋のスペースの関係もあるので。これからは小説は紙の書籍、マンガや評論、エッセイは電子書籍で購入するつもりです。

 

 

僕のWishlistです。本は書評書きますので、送ってもらえたら超喜びます。

 http://amzn.asia/grHBJB6

 

とても素敵な本だったので、万人にオススメできます。ぜひどうぞ!クロさんありがとう。